故人の遺言で遺骨を海に撒いて欲しいと言われたけど、どうしたらいいか分からない。
散骨ってしてもいいの?
トラブルになったら嫌だな。
海洋散骨っていくら位かかるの?
海洋散骨をした後ってどうなるの?
海洋散骨のシーンは映画やテレビドラマなどで一度はみなさんも御覧になられたことがあると思います。
広大な海に遺骨を散骨する光景に憧れて遺言として残される方もいます。
しかし、いざ海洋散骨をしようと思った時、何からしていいのか分からないといった声をよく聞きます。
この記事では海洋散骨についての流れや費用、メリット・デメリットなどを述べたいと思います。
海洋散骨とは
海洋散骨とは、その名のとおり海に遺骨を散骨する行為です。今までは、遺骨はお墓の中に納骨することが当たり前で、お墓を持たない人はお墓を新しく建てて納骨するのが一般的な考え方でした。
しかし、お墓を建ててもお墓を守っていく人がいないという理由や金銭的理由などで、お墓を持つことを躊躇する人がここ数年増えてきました。
私もその様な御相談を受けることが多くなったなあと感じていて、これは東京などの都市部だけでなく、地方でも同じ様な傾向があります。
その中で海洋散骨は、最近注目されつつある埋葬方法の一つです。
そもそも散骨はしてもいいのか?
では海洋散骨は個人が勝手にしてもいいものなのでしょうか?
結論から言いますと、グレーゾーンに当たります。それは、まだ散骨についての法律がはっきりと整備されていないので「禁止はされていないけれど、認めてられてもいない」ということになります。
ただ、墓地埋葬法という法律があり、遺骨を埋葬する場合、自治体の許可が必要となります。自治体によっては条例で散骨を禁止しているところもあり、それを知らずに散骨してしまうと、罰則になる場合があるので注意が必要です。
また、散骨する遺骨は2㎜以下のパウダー状に粉骨しなくてはいけません。そして船で沖合まで移動し散骨します。間違っても、防波堤や浜辺で散骨することは近隣マナーの観点からやめておいた方がいいでしょう。
条例の確認や遺骨のパウダー化、船のチャーターなどのことを考えると個人で散骨することは難しく、業者に依頼することが一般的です。
海洋散骨の費用
では業者に海洋散骨を依頼した場合の費用はどのくらいのなのでしょうか。プランにもよりますが、5万円~30万円がおおよその目安となってきます。
一般的なプランは3種類になります。
【委託代行タイプ】 5万円前後
業者に遺骨を渡し散骨してきてもらうタイプです。この場合、日時や散骨の場所は指定できず、業者もある程度遺骨がまとまった時にまとめて散骨します。
当然、遺族の同船はできません。
【乗合同船タイプ】 15万円前後
何組かの遺族と船に乗合し、散骨するタイプです。業者が用意してきたいくつかの日時から選ぶことができるので、ある程度の融通はききます。ただ、天候にも左右されるので予備日の確保などが必要となります。
【チャーター船タイプ】 30万円前後
船を一艘チャーターし、散骨するタイプです。日時を業者と相談して決めますから、希望の日時に散骨することが可能です。こちらも天候の都合上、予備日の確保は必要ですが、船上での会食や生演奏などのセレモニー的なことをオプションで用意してくれる業者もあるので、希望にあった散骨を行うことができます。
海洋散骨のメリット・デメリット
テレビや映画などでロマンティックな描かれ方をされている海洋散骨ですが、実際に行うとなるといろいろと問題が出てくるものです。海洋散骨のメリット・デメリットを知ることで注意すべき点が見つかると思います。
海洋散骨のメリット
費用負担が少ない
お墓を建てたり、樹木葬や納骨堂を求めたりするとどうしても100万円前後の費用がかかってきます。海洋散骨ですとチャーター船の場合でも30万円前後と費用を押さえることが可能です。
維持管理の心配が無い
お墓を建てた場合、維持管理の必要性が出てきます。これは納骨堂なども同じことで、霊園への管理料等のランニングコストがかかってきます。また、墓じまいの心配なども出てきます。海洋散骨はそういった経済的、精神的な心配をする必要がありません。
故人の意思を尊重することができる
人間はいづれ自然に還るものといった考え方や子供たちに負担をかけたくないという考え方から「海に自分の遺骨を撒いて欲しい」と思っている方が増えてきました。そういった故人の意思を尊重することができます。
海洋散骨のデメリット
お墓参りや献花ができない
当然のことですがお墓を建てないのでお墓参りができません。また献花で海にお花を投げ入れたりするのは、マナーの点から見ても好ましくありません。映画やテレビドラマなどでそういったシーンを見ますが、あれは撮影許可を取った上での演出ですから、現実に行った場合、不法投棄と勘違いされても文句は言えません。ですから、遺族が寂しい思いをする可能性があります。
遺骨を残すことができない
散骨した遺骨は手元に戻すことはできません。また遺骨をパウダー状にしてしまうことを心よく思わない親族もいるかも知れません。数年経った後、お墓を建てようと思っても遺骨が戻ってこないので、それも難しくなります。
親族間のトラブルになりやすい
海洋散骨に対する理解度はまだまだ低いのが現状です。特に高齢の親族の場合、散骨に対して拒絶反応を示す方がたくさんおられます。本人が良くても他の親族とトラブルで苦労するのは子供たちですので、親族には理解を得られる様しっかりと説明をしておく必要があります。
海洋散骨をした後はどうなるの?
海洋散骨をした後はどうなるのでしょう。主に遺族のことになりますが、故人を偲ぶ対象が曖昧になります。特に日本は昔から故人を偲ぶ時、お墓参りに行くのが通例です。
それが、遺骨を海に撒くのでお参りの対象が漠然としたものになり感情移入がしにくくなります。
私の仕事柄、お寺の御住職と話をする機会がたくさんあります。ある御住職のお話では散骨をした方の7割が後悔しているとおっしゃってました。自分の身内の遺骨が手元に残らないということは、遺族の喪失感はかなり大きいものになるそうです。
海洋散骨は確かにメリットもありますが、デメリットも当然あります。一時の感情に流されず、まずは親族や家族としっかりと話合うべきだと思います。
ただ、最近では遺骨の全てを散骨するのではなく、一部を手元に残しておくことができる小さな骨つぼやペンダントなどを用意してくれる業者もあるので、業者を決める際には事前にしっかりと吟味することが必要だと思います。